高橋 晃一氏(たかはし・こういち)
昭和30年2月24日生まれ57歳、北海道出身。日本大学工学部土木科卒。アーバン設計代表取締役、ユーパロ室ノ木保育園理事長、日本大学工学部土木工学科非常勤講師、土木学会木橋技術小委員会委員ほか。
赤外線を利用した建築物の劣化調査および診断技術の向上を目的に県内有志が集い、県外壁診断協会が一昨年設立した。同業種者の県レベルにおける組織化は全国で初めてで、関係者から注目を集めている。東日本大震災でも浮き彫りになった老朽ビルやマンションなどの建築物改修に必要な診断手法の確立は、県民の安全安心の確保からも重要な課題。本紙では会長の高橋晃一氏に設立目的や今後の方針などを聞いた。(聞き手=朝倉久仁男本社郡山支社長)
◆県内有志で一昨年設立
― 協会設立の背景と目的について。
高橋会長 近年、定期報告が適切に行われなかったことが一因と思われる建築物などの事故が多発していることから、建築基準法第12条に基づく定期報告制度が改正され、平成20年4月1日から、所有者および管理者に対し、「注意喚起」から「報告義務」となりました。かつて、旧建設省土木研究所により平成元年からモルタルの吹付け法面の老朽化診断の手法の一つとして熱赤外線映像法の実用化に向けた技術開発が進められ、平成8年1月には「熱赤外線映像法による吹付け法面老朽化診断マニュアル」が発行され、さらに平成13年には「第三者被害を予防するための橋梁点検要領(案)」が作成され、高欄壁やコンクリート床版下面、さらに外壁タイルなどの「浮き・剥離」の調査にも熱赤外線映像法による調査が適用されましたが、その中には屋外に使用できない波長帯の熱赤外線カメラが用いられたり、画像解析技術の乏しい会社が業務を請け負うなど、いくつかの悪しき事例で、赤外線調査に疑問を持たれるなど赤外線調査そのものが否定されるようなことがありました。
そこでわずかなミスで赤外線調査が否定されたり、中央業者に委託が切り替えられたり、診断手法そのものが衰退しないためにも、地域で活動する私たちが、建築基準法第12条を通して外壁などの落下による事故を未然に防止する一翼を担い、常に高い水準の技術を提供し地域循環型サービスの提供に努めることを目的に、県内に本社を置く15社が集まり協会を設立しました。
― 赤外線カメラによる調査とはどのようなものですか。
会長 建物などの対象物から出ている赤外線放射エネルギーを面的に検知し、映像化した温度差画像から温度特性を考慮して解析することで、外壁の「浮き・剥離」を把握する非破壊調査の技術です。
◆40人の有資格者を育成
― これまでの活動内容について教えてください。
会長 協会設立1年目は会員の技術研さんと有資格者の育成を最大の目的として、日本赤外線サーモグラフィー協会の後援で東京開催を郡山開催にしていただき「赤外線サーモグラフィーによる外壁調査講習会(初級コース)」、さらに日本大学工学部より建物の提供を受け「赤外線サーモグラフィーによる外壁調査講習会(実技、実習コース)」で40名強の有資格者の育成と8ポイントのCPD研修を実施しいたしました。また、「標準歩掛り作成」のワーキンググループを構成し「外壁診断標準歩掛り(案)」を作成いたしました。
― 設立から1年余で、会員も増加しているようですが。
会長 昨年末現在で21社になりました。会員企業の所在地も中通り、会津、浜通りとバランスが取れてきました。改正された建築基準法の猶予期間3年が終了し、23年度から本格実施に移行したことで診断業務の需要が増えてきたことが第一の要因と考えます。さらに高度成長期に建設された建物が、今回の東日本大震災で倒壊や外壁落下など被害が続出したこともあって、建物所有者の点検意識が誘発されたと考えられます。
― 東日本大震災や原発事故発生を受けて協会として特別に取り組んだことはありますか。
会長 震災直後、協会としてまとまった行動はできませんでしたが、それぞれがボランティアで調査などに携わりました。特に行政機関が管理する共同住宅を中心に耐震調査を含む目視による外壁診断を行い、建物の入居継続が可能かどうか判断していただくための基礎資料などを提供しました。
◆全県的即応体制整備が重要
― 最後に福島の復旧・復興に向けての抱負を。
会長 震災後初めて開いた昨年夏の臨時総会で、当会員からも自治体との災害協定締結が必要との意見が出されました。公的な存在として、突発的な応急処置が必要とされる震災事故にあって、調査診断、設計、施工までの一連の対応のできる全県的な即応体制を整えることが重要と考えています。
私たちの基本は地域循環型サービスの提供にあり、地元のインフラは地元を知る地元業者が維持管理に務めることが望ましく、建物所有者や利用者に安心感を与え、さらに雇用の維持にもつながります。診断業務は、今後増加が期待されることから、被災者の雇用に向けた受け入れ態勢を整え、適正な価格算出のための「外壁診断標準歩掛り(案)」もまとめたことから、発注機関に対してご理解いただけるよう活動していきたいと考えています。
― ありがとうございました。