卓越技能者(現代の名工)に選ばれた・白井司一氏に聞く

【プロフィール】
 白井 司一氏(しらい・しいち)
大正5年に祖父が創業した白井木工所の経営を昨年10月、息子に譲り、数年前に入会した全国伝統建具技術保存会の活動に力を注ぐ。2男2女が独立し光江夫人と2人暮らし。
 技能者にとって最大級の栄誉に「まさか、このような賞をいただけるとは」と謙虚に喜ぶも実績は十分。全国建具展示会で入賞を果たした高い技術力に加え、県建具・木工組合連合会技能士会会長の立場から長年、本県建具業界の技能伝承、後進育成に尽力。全国技能士会連合会マイスターとして一般に技能の素晴らしさを伝えてきた。
 大正5年に祖父が創業した白井木工所の経営を昨年10月、息子に譲り、数年前に入会した全国伝統建具技術保存会の活動に力を注ぐ。「伝統技術(による建具)は受注がなく商売に向かない。覚え伝えていかなければ廃れてしまう」と年数回、全国から集まる若い技能者に混じり、建具製作で唯一の選定保存技術認定者(文化庁認定)・鈴木正氏から重要文化財の建具修復技術等を学ぶ。講習の一環で知恩院、東寺の修復を手伝い、保存会が受注した桜田門修復にも携わった。「井の中の蛙だったと感じるほど、勉強させてもらっている」と目を輝かせる。
 技能伝承に注力する傍ら、多様な顧客ニーズに対応できる総合的な技術者の育成が基本的なスタンスだ。手加工技術の習得を、厳しい経営環境を乗り切るための手段の一つととらえ、従業員には技能五輪・グランプリ出場と資格取得を厳命。加工機械など設備の近代化も重視する。建具業界の生き残りへ広域的な連携、異業種とのコラボレーションを説く。
 モットーは「一途一心」。仕事の息抜きに農作業を楽しむ。「趣味と道楽を兼ねている」と笑う組子づくりは、来年の全国建具展示会長野大会への出展を目指し大作を製作中。