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2011.0719

緊急時対応マニュアル整備を/東日本大震災テーマにフォーラム/建設トップランナー倶楽部

 建設業の新たな地域産業化を目指した経営者の集まりである建設トップランナー倶楽部(代表幹事・和田章日本建築学会会長、米田雅子慶応大特任教授)は15日、「東日本大震災~現場からの証言~」と題したフォーラムを、東京・三田の建築会館ホールで開いた→=写真←。岩手・宮城・福島の3県の建設業者が被災現場から復旧事業の現状や課題を報告したほか、東北地方整備局と3県の県庁の幹部職員が被災状況や課題、復旧計画などを説明。本県からは本田伸一県土木部技術管理課建設産業室主幹と石川俊石川建設工業社長が参加した。
 東日本大震災の被災地の建設業者や行政の取り組みについて関係者から話しを聞き、課題や対策を共有することが狙い。当日は、地域の建設業のネットワークによる支援事例の紹介や、「大震災の復旧計画と地域建設業の役割」をテーマにしたパネルディスカッションも行った。定員400人の会場は立ち見もでるほどだった。
 フォーラムでは、東北地方整備局の川嶋直樹企画部長が、緊急随意契約により、地元建設業者が震災直後から復旧作業に尽力した事例や、盛土構造の道路が津波を食い止め、地域住民の避難場所になった事例などを紹介した。
 本県から参加した本田主幹は、震災発生時に相馬港湾建設事務所の次長として地震・津波に直面。2730mの沖防波堤など港湾施設や、背後の集落が壊滅的な被害を受けたほか、同事務所までもが被災した状況を報告。所員が一丸となって応急復旧に取り組み、短期間で支援船の接岸にこぎつけた復旧第一歩までの取り組みを時系列で振り返った。
 また、本県では原発事故と風評被害を含めた4重苦の中で復旧作業が続けられていることを強調し、「20km圏内では地元建設業の方々が危険な状態の中で自らの重機を提供して行方不明者の捜索を一生懸命やっていただいている」と証言。「これから福島県を再生するという強い目標を持って、計画的に建設産業の活力を強く支援していきたい。建設業の元気が日本の元気につながるように頑張っていきたい」と述べた。
 石川社長は地震、津波に加え原発事故により警戒区域、緊急時避難準備区域(屋内避難区域)などに指定され、通常の生活が取り戻せない南相馬市などの状況を報告。
 地震直後から行方不明者捜索支援のため被災現場で道路の啓開活動を開始したものの3月12、14日の爆発で屋内避難、自主避難、屋外作業禁止が指示されたが、22日には残った地元建設会社が行方不明者捜索を再開、放射線対策が明確にされないまま海水の排水、がれき移動、土砂撤去に当たったことを述べた。
 通信が途絶したことを踏まえ企業の緊急時対応マニュアルの整備、現場の施工データのバックアップ、放射線対策を含めた労働安全対策の必要性を訴えた。
 このほか、宮城県から参加した深松組の深松努社長は、自らが副会長を務める仙台建設業協会が復旧事業の円滑な推進に大きな役割を果たしていることに触れた上で、「仮に5年後に震災が起こっていたら、今回のような対応はできなかったかもしれない」と、建設業界が疲弊し、事業者が減り続けている現状を危惧した。そして、「この問題は日本全体の話。いまの建設業者数で地域を守れるのか、発注者は真剣に考えて対策を進めてほしい」と訴えた。